論文で分かった、在宅ワークで集中力を高める5つのコツ

集中力 公開 約4分で読めます

「タスクの切り替え」「通知」「スマホの存在」「短い休憩」「環境音」。心理学・HCI研究の知見から、家で集中するための実践的なコツを紹介します。

スマホを遠ざけて砂時計を置き、ノートパソコンの作業に集中する人のイラスト

家で働いていると、誰にも邪魔されないはずなのに、なぜか集中できない——そんな日はありませんか?

集中力は「気合い」だけの問題ではありません。仕事の進め方や環境によって、集中しやすさは大きく変わることが研究で示されています。この記事では、心理学やHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)の論文から、在宅ワークで実践しやすい5つのコツを紹介します。

研究を読むときの注意

ここで紹介する研究は、特定の条件(実験室、特定の参加者層など)で得られた結果です。誰にでも同じ効果があるとは限らないので、「試してみる価値のある仮説」として取り入れてみてください。

1. タスクは「区切りよく終えてから」切り替える

組織行動学者のSophie Leroyは、ある作業から別の作業に移ったあとも、前の作業に注意の一部が残り続ける現象を「注意残余(attention residue)」と名付けました(Leroy, 2009)。

実験では、前の課題を完了しないまま次の課題に移った参加者は、前の課題についての考えが残りやすく、次の課題の成績が低くなる傾向が見られました。

研究のポイント

前の作業が中途半端なまま次に移ると、頭の一部がまだ前の作業に引っ張られている。

実践のコツ

  • 作業を切り替える前に「次にやること」を1行メモしてから離れる(中断しても頭から追い出しやすくなる)
  • Slackやメールの確認は作業の合間にまとめて行う
  • 30分〜1時間単位で「この時間はこれだけ」と決めて取り組む

2. 通知による中断を減らす

カリフォルニア大学アーバイン校のGloria Markらの実験(Mark et al., 2008)では、作業中にメールや電話で中断された参加者は、作業をより速く終えた一方で、ストレス、フラストレーション、時間的なプレッシャー、労力感が高くなることが報告されています。

つまり中断されても「なんとか間に合わせる」ことはできますが、その代償として疲れやすくなるということです。

実践のコツ

  • 集中したい時間はPC・スマホの通知をオフにする(OSの集中モードを活用)
  • チャットのステータスに「〜14:00まで集中作業中」と書いておく
  • 返信の「即レス」が本当に必要な連絡かどうかをチームで決めておく

3. スマホは「別の部屋」に置く

Wardら(2017)の実験では、スマホを別の部屋に置いた参加者は、机の上に置いた参加者よりも、ワーキングメモリなどを測る課題の成績が高い傾向がありました。通知をオフにして伏せて置いていても、近くにあるだけで影響が見られたとされています。

ただし、この研究についてはその後の追試で同様の効果が確認できなかった報告もあり、効果の大きさについては議論が続いています。それでも「スマホを視界から外す」のはコストのかからない対策なので、試してみる価値はあるでしょう。

実践のコツ

  • 集中タイム中はスマホを別の部屋か、引き出しの中へ
  • 2段階認証などでスマホが必要な場合は、使い終わったらすぐ戻す

4. 40秒だけ「緑」を眺める

注意回復理論(Attention Restoration Theory)では、自然の風景には疲れた注意力を回復させる効果があると考えられています。

Leeら(2015)の実験では、注意力を使う課題の途中で40秒間、緑化された屋上の画像を見た参加者は、コンクリートの屋上の画像を見た参加者に比べて、その後の課題でミスが少なく、反応も安定していました。

実践のコツ

  • デスクから見える場所に観葉植物を置く
  • 休憩時は窓の外の木や空を眺める
  • 小休憩にスマホを見るのではなく、ベランダに出る

5. 「ほどよい雑音」でアイデアを出す

Mehtaら(2012)の研究では、約70dB程度の中程度の環境音のもとで、静かな環境(約50dB)や大きな騒音(約85dB)に比べて、創造的な課題の成績が高くなることが示されました。70dBは、にぎやかなカフェくらいの音の大きさです。

ただし、これは「アイデア出し」のような創造的な課題での結果です。細かい作業や文章の校正などでは、静かな環境の方が向いている場合もあります。

実践のコツ

  • 企画やアイデア出しは、カフェの環境音(カフェ音BGM)を小さめに流しながら
  • 細かい作業や集中が必要な作業は、ノイズキャンセリングで静かに

まとめ

コツ根拠となる研究
区切りよく終えてから切り替えるLeroy (2009)
通知による中断を減らすMark et al. (2008)
スマホを別の部屋に置くWard et al. (2017)
40秒だけ緑を眺めるLee et al. (2015)
アイデア出しはほどよい雑音でMehta et al. (2012)

どれも今日から、ほぼお金をかけずに試せるものばかりです。まずは1つ選んで、1週間続けてみてください。

参考文献

  1. Leroy, S. (2009). Why is it so hard to do my work? The challenge of attention residue when switching between work tasks. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 109(2), 168–181. (新しいタブで開きます)
  2. Mark, G., Gudith, D., & Klocke, U. (2008). The cost of interrupted work: More speed and stress. Proceedings of CHI 2008, 107–110. (新しいタブで開きます)
  3. Ward, A. F., Duke, K., Gneezy, A., & Bos, M. W. (2017). Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. Journal of the Association for Consumer Research, 2(2), 140–154. (新しいタブで開きます)
  4. Lee, K. E., Williams, K. J. H., Sargent, L. D., Williams, N. S. G., & Johnson, K. A. (2015). 40-second green roof views sustain attention: The role of micro-breaks within attention restoration theory. Journal of Environmental Psychology, 42, 182–189. (新しいタブで開きます)
  5. Mehta, R., Zhu, R., & Cheema, A. (2012). Is Noise Always Bad? Exploring the Effects of Ambient Noise on Creative Cognition. Journal of Consumer Research, 39(4), 784–799. (新しいタブで開きます)

この記事を書いた人:リモート日和 編集部

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